アトピー性皮膚炎の原因遺伝子変異

アトピー性皮膚炎の原因遺伝子変異がわかった!

そう報じられたのは今年、2006年の3月のことだった。
Nature Geneticsという科学誌に報じられたその原因遺伝子はフィラグリンというたんぱく質だった。
耳慣れないそのたんぱく質はいったい何なのか?

皮膚は、表皮に覆われている。
表皮は角質というたいへん強固なタンパク質の層でおおわれている。
この角質を作り出すのが表皮細胞で、他の臓器の上皮細胞が一層しか形成しないのに対し、表皮や消化管上部という体表面に面した上皮だけが多層の細胞から構成されていて、さらにそれらが構造変化して角質というものまでをも作り出す。

角質は、単純に言えばバリアである。
外敵の侵入を防ぐし、内部の水分や栄養分の漏出を防ぐ。

したがって、表皮がきちんと機能しないと外敵が簡単に入ってくるし、
水分も蒸発しやすくなる。


さて、このフィラグリン、角質を構成する蛋白の一種である。
これが先天的におかしくなると、完全におかしくなると
「先天性魚鱗癬」
という見た目にも臨床症状も悲惨で恐ろしい病気になる。
程度は様々であるが、言葉の通りに皮膚が乾燥した魚の肌のように、
ささくれ立ったうろこだらけのような外観になる。

この患者さんたちは当然ながらスキンバリアはぼろぼろで、
簡単に感染を繰り返すし、様々な障害を併発する。


ところがこの患者さん達の遺伝子変異を半分持つ人が
ことごとくアトピー性皮膚炎を発症しやすいことが
イギリスの学校の生徒のスクリーニングで明らかになった。

ある学校の生徒達を調べてアトピー性皮膚炎のある子とそうでない子で、
いくつかの遺伝子に注目して調べたところ、
フィラグリン遺伝子の片方だけに突然変異がある子供では
ことごとくアトピー性皮膚炎が発症していたというのだ。

彼らの表皮はぱっと見には異常がないのだが、
実は表皮構造が少し壊れていて、バリア機能が低下しているというのだ。


表皮がスキンバリアとしての機能を失うことで様々な外敵が体内に侵入しやすくなる。

花粉症のスギ花粉や、喘息患者のダニの死骸など、
アレルギーを起こす原因となる刺激物質をアレルゲンと呼ぶのだが、
スキンバリアが壊れると、皮膚からこれらのアレルゲンが侵入しやすくなる。

これがアレルギーを起こしやすくなり、アトピー性皮膚炎が起こるだろうというのだ。


もちろん、アトピー性皮膚炎を引き起こす人に必ずフィラグリンの異常があるわけでもない。
先進国でのみ好発するなど、アトピー性皮膚炎発症にかかわる因子は遺伝因子以外にも多数ある。

しかし、この発見はアトピー性皮膚炎の研究と治療にひとつの大きな道を示した画期的な研究である。


アトピー性皮膚炎が食物アレルギーに起因すると頑なに言い張ってきた人たちはその考えを改めねばならない。
アトピー性皮膚炎が免疫系の破綻で引き起こされ、皮膚症状は後から付いてくると言い張ってきた人たちも自己弁護の余地がない。


ごく一部の原因遺伝子の解明かもしれないが、これによってスキンバリアの障害が原因の一部であることが確認され、アトピー性皮膚炎患者のスキンバリア機能を調べ、それに対処することが大切であることが再認識されたわけである。

この分野での症状に応じた様々な治療法の開発が急ピッチで進むことを期待しよう。



Nature Genetics 38 ( 4 ), (Apr 2006)
一般的な皮膚疾患と関連する遺伝子多型

Nature Geneticsの4月号:フィラグリンをコードする遺伝子の変異が、
アトピー性疾患の発症リスクと関連していることが明らかに。
アトピーと言うと日本ではアトピー性皮膚炎をさすが、
アトピー性疾患には、アトピー性皮膚炎(湿疹、皮膚の炎症、皮膚のかゆみ)、アレルギー、喘息が含まれる。

フィラグリンの変異で尋常性魚鱗癬(さめ肌)という皮膚疾患になることは、Irwin McLeanたちによって既に報告されていた。
尋常性魚鱗癬の患者の多くがアトピー性皮膚炎にもかかっていることに気付いたMcLeanたちは患者以外でフィラグリンの変異がアトピー性皮膚炎の発症と関係するのかを調べた。

アトピー性皮膚炎とそれに併発する喘息の亜型の発症リスクとフィラグリンの機能喪失との関連性が確認された。
ただし、皮膚炎とは無関係に喘息を発症するリスクとフィラグリンの機能喪失には関連性が認められなかった。

先進国では、なんらかのアトピー性疾患の患者(アレルギーの患者)が人口の約20%を占めている。
研究対象の2種類のフィラグリン遺伝子多型は、ヨーロッパ系の9%に存在する。

これらのことから、フィラグリンの異常がアトピー疾患、特にアトピー性皮膚炎の発症にかかわりを持つことが推測された。

posted by atopymouse at 22:06 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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脱ステロイド療法


「脱ステロイド」の本来の意味とは、アトピー性皮膚炎の症状が改善傾向にないのに現在治療に使用中のステロイド外用剤を中止して、ステロイド外用剤を使用せずにアトピー性皮膚炎の症状をコントロールする方法のことである(そのため、症状が改善してきたためステロイド外用剤を中止して経過をみるという行為は、「脱ステロイド」と称するのは不適切であろう)。
ステロイド外用剤は非常に高い有効性を持つ薬剤であるが、特に重症例では正しく医師の指導の下に使用していても十分に症状を抑えられない例や、長期の連用により皮膚萎縮、接触性皮膚炎、二次感染といった副作用をきたす例が存在する[18](ステロイド皮膚症の項参照)。 このような症例において副作用から脱却したり、ほかの治療法を模索するといった過程で脱ステロイド療法が行われることがあり、実際にそのようなケースに限ってはステロイド剤の中止が有効であったという報告もある。
しかし当然ながら、このような治療法に踏み切るためには、現在のステロイド外用剤による治療が効果をもたらしていないのかを慎重に判断する必要がある。

一方で「脱ステロイド」という言葉がアトピービジネスにおいて多々使用されることがある。その理由であるが、アトピービジネスは、他の科学根拠のない代替療法を勧めるため、「ステロイド外用剤はアトピー性皮膚炎を悪化させる」「ステロイド外用剤のリバウンドが続いている」「ステロイドを使用した年月に比例して治療に時間がかかる」「病変部から<毒>が排出されているので湿疹は好転反応である」などの独自理論を説明し、ステロイド剤に対して恐怖を煽り、ステロイド剤を中止させようとする場合が多いためである。
さらに自然主義的観点からプロトピックの使用も是としないことが多い(脱プロトピック)。当然これらの主張に医学的な根拠は無い。このような業者に脱ステロイド療法(およびそのビジネス独自の療法)を指示されて極端に悪化し、かゆみが強く夜も眠れないなど生活に支障をきたしたり、ひどい場合緊急入院という結果となる症例が多数発生し続けている。
少数ながら合併症による死亡例もある。また、アトピービジネスやマスコミによるステロイド剤の恐怖などの誇張した宣伝の結果、治療が難航している患者が自己判断で「脱ステロイド」を行い、症状が急激に悪化するという悲劇的な2次的被害もみられる。一時期、社会問題になったこともあった。

以上のように科学的根拠のないステロイド害悪論に基づいた「脱ステロイド」は危険であり、実施するに当たっては実際の病態がステロイドの副作用によってもたらされているのかを多数の医師とよく相談して判断した方が良い。その際、プロトピック軟膏やPUVA療法、シクロスポリンといった他の治療に切り替えながら様子をみることが多いので、それに関しても医師と十分に相談すべきである。

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