アトピー性皮膚炎(小児型)治療にカルシニューリン阻害剤(タクロリムス)が効果的

アトピー性皮膚炎(小児型)治療にカルシニューリン阻害剤(タクロリムス)が効果的

アトピー性皮膚炎の第一選択はこれまで長い間ステロイドであった。
しかしステロイドによるアトピー性皮膚炎には患者側の警戒心がものすごく、
(これにはアトピービジネスという民間療法で儲けてやろうと言う人の立てた風評による影響が少なからずある。)
特に小児の治療には頑なに拒否する母親の存在がしばしば大きな問題となる。

また、実際に顔などの皮膚の薄い部分に強力なステロイドを長期連用すると
アトロフィー(皮膚が薄く空けた様になる。)という副作用が起こることは知られていて、
顔への長期連用には問題があった。

それらの問題すべてに対しての救世主ともいえる薬剤がタクロリムスを始めとするカルシニューリン阻害剤である。
この薬はもともと茨城県の土壌細菌から発見された物質で、
免疫抑制作用の効果の高さから、移植医療において画期的な効果を発揮してきた。
近年、様々な臓器の移植治療が発達したのはこの薬剤の発見と開発に負うところが大きい。


その薬剤を皮膚に塗る薬として開発されたのがタクロリムスである。
免疫抑制作用ということから当初は自己免疫疾患の局所治療法法として期待されたものが、
アトピー性皮膚炎においても著効を発揮すること、
ステロイド剤で問題となる顔面皮膚のアトロフィーが起こりにくいことなどから、
小児の顔面に使うための(大人の顔も)新薬として使われ始めたのが1999年ごろであろうか。

この論文はそんなタクロリムスの効果について、改めて評価をしたものである。

Am J Clin Dermatol. 2005;6(2):65-77.
Safety and efficacy of topical calcineurin inhibitors in the treatment of childhood atopic



免疫抑制作用を有するカルシニューリン阻害剤だが、
マウスに大量投与するとリンパ腫などを引き起こす頻度があがることが知られている。

これは免疫抑制によって悪性新生物の免疫機構による排除がうまく行かないことが原因のひとつと思われるが、
カルシニューリンそのものの作用かどうかについての議論も決着を見たわけではない。

そういう情報を耳にして「これを使うと癌になる」と騒ぎ立てる人がいるが、
これもマウスの投与量を考えると、塗り薬でその量に達しようとすれば
朝から晩まで24時間タクロリムスろーしょん風呂にどっぷり漬かり続ける生活をしても
数十年で発症するかどうかというところだろう。

というのも、この論文でも報告されているが、皮膚に塗った後の血中濃度は対して高くならないし、
すみやかに正常に復帰する。

また、今回も皮膚のアトロフィーのような強力なステロイドを連用した際の副作用はない。


ただしこの薬を用いる点で唯一の問題となるのがぬってすぐに感じるひりひり感、灼熱感である。
これに関してはまだ推測と実験検証の域を出ていないが、表皮と真皮に来ている末梢神経の
神経伝達物質が一気に放出される副作用がこの薬にはあるためではないかと考えられている。

そのこと自体に副作用はないし、神経伝達物質が枯渇してしまえば問題ないので、
最初の3日間ぐらいを乗り切ることができればあとは副作用も感じられない。

神経伝達物質が放出されて枯渇しても大丈夫かということだが、
これを使用した後で感覚障害が出たという話はこれまでのところはない。
(使用開始7年なので、10年以上使ったら問題がないのか保証できるかと聞かれればそれは保証不可能だが、
わずかに上昇した血中濃度がすぐに下がること、感覚障害や動物実験での末梢神経障害の報告はないことから
確率は非常に低いと思われる。)


ということで、このカルシニューリン阻害剤、アトピー性皮膚炎の治療薬としてたいへん期待できるものである。
しかし痒みや免疫系の抑制ということであればステロイド剤外用薬の方が強力なので
極めて症状の強い患者やその箇所にはステロイド剤で痒みを抑え、
症状が落ち着いてからカルシニューリン阻害剤に徐々に切り替える。

落ち着いてきたらカルシニューリン阻害剤も間隔をあけて離脱を図る。

再燃した場合はそのとこの状況の応じてステロイド剤、またはカルシニューリン阻害剤を使うという
症状に応じた使用方法が期待される。
その点においても、初期治療の場合、再燃の場合、患者は経験の豊富な皮膚科医の指導に従うべきで、
保存しておいた薬剤を自分の判断で適当に使うということは出来るだけ避けるべきである。
posted by atopymouse at 20:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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脱ステロイド療法


「脱ステロイド」の本来の意味とは、アトピー性皮膚炎の症状が改善傾向にないのに現在治療に使用中のステロイド外用剤を中止して、ステロイド外用剤を使用せずにアトピー性皮膚炎の症状をコントロールする方法のことである(そのため、症状が改善してきたためステロイド外用剤を中止して経過をみるという行為は、「脱ステロイド」と称するのは不適切であろう)。
ステロイド外用剤は非常に高い有効性を持つ薬剤であるが、特に重症例では正しく医師の指導の下に使用していても十分に症状を抑えられない例や、長期の連用により皮膚萎縮、接触性皮膚炎、二次感染といった副作用をきたす例が存在する[18](ステロイド皮膚症の項参照)。 このような症例において副作用から脱却したり、ほかの治療法を模索するといった過程で脱ステロイド療法が行われることがあり、実際にそのようなケースに限ってはステロイド剤の中止が有効であったという報告もある。
しかし当然ながら、このような治療法に踏み切るためには、現在のステロイド外用剤による治療が効果をもたらしていないのかを慎重に判断する必要がある。

一方で「脱ステロイド」という言葉がアトピービジネスにおいて多々使用されることがある。その理由であるが、アトピービジネスは、他の科学根拠のない代替療法を勧めるため、「ステロイド外用剤はアトピー性皮膚炎を悪化させる」「ステロイド外用剤のリバウンドが続いている」「ステロイドを使用した年月に比例して治療に時間がかかる」「病変部から<毒>が排出されているので湿疹は好転反応である」などの独自理論を説明し、ステロイド剤に対して恐怖を煽り、ステロイド剤を中止させようとする場合が多いためである。
さらに自然主義的観点からプロトピックの使用も是としないことが多い(脱プロトピック)。当然これらの主張に医学的な根拠は無い。このような業者に脱ステロイド療法(およびそのビジネス独自の療法)を指示されて極端に悪化し、かゆみが強く夜も眠れないなど生活に支障をきたしたり、ひどい場合緊急入院という結果となる症例が多数発生し続けている。
少数ながら合併症による死亡例もある。また、アトピービジネスやマスコミによるステロイド剤の恐怖などの誇張した宣伝の結果、治療が難航している患者が自己判断で「脱ステロイド」を行い、症状が急激に悪化するという悲劇的な2次的被害もみられる。一時期、社会問題になったこともあった。

以上のように科学的根拠のないステロイド害悪論に基づいた「脱ステロイド」は危険であり、実施するに当たっては実際の病態がステロイドの副作用によってもたらされているのかを多数の医師とよく相談して判断した方が良い。その際、プロトピック軟膏やPUVA療法、シクロスポリンといった他の治療に切り替えながら様子をみることが多いので、それに関しても医師と十分に相談すべきである。

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