肥満細胞がIL-18前駆体を切断して活性型IL-18断片を作る

肥満細胞がIL-18前駆体を切断して活性型IL-18断片を作る

アトピー性皮膚炎がらみの今回の論文は日本からの発表である。

兵庫医科大学の中西らの研究により、IL-18というサイトカインがIgE産生を亢進させることが、
そしてそのIL-18の前駆体は表皮細胞(ケラチノサイト)から産生されることがわかっていた。
実際にIL-18を恒常的に皮膚で発現させたマウスではアトピー性皮膚炎類似の症状が出ることがわかっている。

このIL-18前駆体を活性化させる仕組みがアレルギーの主役である肥満細胞にも備わっているという話である。

J Immunol. 2006 Dec 15;177(12):8315-9. Links
Human Mast Cell Chymase Cleaves Pro-IL-18 and Generates a Novel and Biologically Active IL-18 Fragment.


そもそも表皮で産生されるIL-18前駆体はそのままでは活性を持たない。
同じく表皮が産生するカスパーゼ1という蛋白分解酵素で
ある部分で切断されることで機能を発揮する成熟体となる。

このIL-18に限らず、サイトカインなどの分泌因子には
このような段階を踏んだ機能発現プロセスを取る分子が少なくない。

それは効果的な分子であるほど二重三重の防御システムとして大切だからだ。
(ミサイル発射スイッチは複数の管理者の了解の下でボタンが押される。)


それでカスパーセ1を欠損したマウスを作ってみたところ、
驚いたことに皮膚でIL-18の活性が確認された。
カスパーゼ以外にIL-18を活性化するメカニズムが存在するということである。

そこでそれが何かを探ってみたところ、肥満細胞が産生するキマーゼという酵素がその役割を果たすことがわかった。
このキマーゼがIL-18前駆体を切断する場所はカスパーゼとは異なるのであるが、
ともかく活性を持つIL-18を産生できるということであった。


肥満細胞はアレルゲン特異的なIgEによって活性化されてさまざまな分子を放出する。
IgE産生を刺激するのは皮膚が産生するIL-18である。
そのIL-18を成熟型へと誘導できる蛋白分解酵素は皮膚と肥満細胞の両方が産生できる。

どっちが卵でどっちがニワトリなんだかわからないが、すくなくとも肥満細胞が暴走を始めると
IL-18成熟のスイッチが入り、IgE産生がさらに誘導されて、
ということで活性化のスパイラルに陥る路はこれでひとつ明らかになった。

次に必要なのはこの正のスパイラルを負にむけて転換するメカニズムの解明であろう。
それはそのままアトピー性皮膚炎の治療に結びつくと考えることも出来るのであるから。


ちなみに、この流れの中にはT細胞などのリンパ球の存在は必要ない。
posted by atopymouse at 16:11 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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脱ステロイド療法


「脱ステロイド」の本来の意味とは、アトピー性皮膚炎の症状が改善傾向にないのに現在治療に使用中のステロイド外用剤を中止して、ステロイド外用剤を使用せずにアトピー性皮膚炎の症状をコントロールする方法のことである(そのため、症状が改善してきたためステロイド外用剤を中止して経過をみるという行為は、「脱ステロイド」と称するのは不適切であろう)。
ステロイド外用剤は非常に高い有効性を持つ薬剤であるが、特に重症例では正しく医師の指導の下に使用していても十分に症状を抑えられない例や、長期の連用により皮膚萎縮、接触性皮膚炎、二次感染といった副作用をきたす例が存在する[18](ステロイド皮膚症の項参照)。 このような症例において副作用から脱却したり、ほかの治療法を模索するといった過程で脱ステロイド療法が行われることがあり、実際にそのようなケースに限ってはステロイド剤の中止が有効であったという報告もある。
しかし当然ながら、このような治療法に踏み切るためには、現在のステロイド外用剤による治療が効果をもたらしていないのかを慎重に判断する必要がある。

一方で「脱ステロイド」という言葉がアトピービジネスにおいて多々使用されることがある。その理由であるが、アトピービジネスは、他の科学根拠のない代替療法を勧めるため、「ステロイド外用剤はアトピー性皮膚炎を悪化させる」「ステロイド外用剤のリバウンドが続いている」「ステロイドを使用した年月に比例して治療に時間がかかる」「病変部から<毒>が排出されているので湿疹は好転反応である」などの独自理論を説明し、ステロイド剤に対して恐怖を煽り、ステロイド剤を中止させようとする場合が多いためである。
さらに自然主義的観点からプロトピックの使用も是としないことが多い(脱プロトピック)。当然これらの主張に医学的な根拠は無い。このような業者に脱ステロイド療法(およびそのビジネス独自の療法)を指示されて極端に悪化し、かゆみが強く夜も眠れないなど生活に支障をきたしたり、ひどい場合緊急入院という結果となる症例が多数発生し続けている。
少数ながら合併症による死亡例もある。また、アトピービジネスやマスコミによるステロイド剤の恐怖などの誇張した宣伝の結果、治療が難航している患者が自己判断で「脱ステロイド」を行い、症状が急激に悪化するという悲劇的な2次的被害もみられる。一時期、社会問題になったこともあった。

以上のように科学的根拠のないステロイド害悪論に基づいた「脱ステロイド」は危険であり、実施するに当たっては実際の病態がステロイドの副作用によってもたらされているのかを多数の医師とよく相談して判断した方が良い。その際、プロトピック軟膏やPUVA療法、シクロスポリンといった他の治療に切り替えながら様子をみることが多いので、それに関しても医師と十分に相談すべきである。

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