アトピー性皮膚炎に関わる抗体IgEを上昇させる遺伝上の問題:PHF11

アトピー性皮膚炎に関わる抗体IgEを上昇させる遺伝上の問題について
ここで少しだけまとめてみましょう。

IgEは抗体の一種で、その中でもアトピー性皮膚炎などの
アレルギー疾患で病態に深くかかわる因子であることがわかっています。

たとえばアレルゲン感受性検査というのは
ある物質に対する特異的な抗体ができてるかどうかを調べる検査ですが、
そこで調べるのがIgEというわけです。

このIgEが生まれつき高い人などは
アレルギー疾患を起こしやすいということですね。
この中で、患者さんの数は少ないのですが有名なものに、
高IgE症候群というのがあって、何種類か知られています。

それはさておき、IgEの上昇にかかわる遺伝子についての情報です。

いくつかの文献からですが、まず一つ目は
PHH11という遺伝子です。

この遺伝子によって作られるたんぱくは
zinc-fingerモチーフというDNA結合能力を持つ分子で、
ほとんどすべての細胞に存在していますが、

スプライシングという遺伝子部分同士のつながり方の違いで、
何種類かの形が存在します。

この中の一部の形は呼吸器や免疫細胞にだけ発現しています。


PHF11の発見とは独立の研究で、
このPHF11が存在する場所にアトピーやぜんそく、
IgEが高いという症状がリンクすることが分かってきました。

そこで詳しく検討されたところ、
PHF11の遺伝子の少しの違いが
どうやらIgEが高くなることに結びつきそうだと
推測されるに至っています。


1. Anderson, G. G.; Leaves, N. I.; Bhattacharyya, S.; Zhang, Y.; Walshe, V.; Broxholme, J.; Abecasis, G.; Levy, E.; Zimmer, M.; Cox, R.; Cookson, W. O. C. M. :
Positive association to IgE levels and a physical map of the 13q14 atopy locus. Europ. J. Hum. Genet. 10: 266-270, 2002.
PubMed ID : 12032735

2. Scanlan, M. J.; Gordan, J. D.; Williamson, B.; Stockert, E.; Bander, N. H.; Jongeneel, V.; Gure, A. O.; Jager, D.; Jager, E.; Knuth, A.; Chen, Y.-T.; Old, L. J. :
Antigens recognized by autologous antibody in patients with renal-cell carcinoma. Int. J. Cancer 83: 456-464, 1999.
PubMed ID : 10508479

3. Zhang, Y.; Leaves, N. I.; Anderson, G. G.; Ponting, C. P.; Broxholme, J.; Holt, R.; Edser, P.; Bhattacharyya, S.; Dunham, A.; Adcock, I. M.; Pulleyn, L.; Barnes, P. J.; and 11 others :
Positional cloning of a quantitative trait locus on chromosome 13q14 that influences immunoglobulin E levels and asthma. Nature Genet. 34: 181-186, 2003.
PubMed ID : 12754510


その後の研究ですが、今のところPubMed検索では
PHF11とアトピーとを結びつけるわかりやすい説明は出ていません。

クロマチン(染色体)の再構成にかかわる分子である、
というだけで、これと密接に絡むSETDB2という分子とともに、
IgE産生細胞の機能に影響を及ぼすようです。

posted by atopymouse at 16:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
脱ステロイド療法


「脱ステロイド」の本来の意味とは、アトピー性皮膚炎の症状が改善傾向にないのに現在治療に使用中のステロイド外用剤を中止して、ステロイド外用剤を使用せずにアトピー性皮膚炎の症状をコントロールする方法のことである(そのため、症状が改善してきたためステロイド外用剤を中止して経過をみるという行為は、「脱ステロイド」と称するのは不適切であろう)。
ステロイド外用剤は非常に高い有効性を持つ薬剤であるが、特に重症例では正しく医師の指導の下に使用していても十分に症状を抑えられない例や、長期の連用により皮膚萎縮、接触性皮膚炎、二次感染といった副作用をきたす例が存在する[18](ステロイド皮膚症の項参照)。 このような症例において副作用から脱却したり、ほかの治療法を模索するといった過程で脱ステロイド療法が行われることがあり、実際にそのようなケースに限ってはステロイド剤の中止が有効であったという報告もある。
しかし当然ながら、このような治療法に踏み切るためには、現在のステロイド外用剤による治療が効果をもたらしていないのかを慎重に判断する必要がある。

一方で「脱ステロイド」という言葉がアトピービジネスにおいて多々使用されることがある。その理由であるが、アトピービジネスは、他の科学根拠のない代替療法を勧めるため、「ステロイド外用剤はアトピー性皮膚炎を悪化させる」「ステロイド外用剤のリバウンドが続いている」「ステロイドを使用した年月に比例して治療に時間がかかる」「病変部から<毒>が排出されているので湿疹は好転反応である」などの独自理論を説明し、ステロイド剤に対して恐怖を煽り、ステロイド剤を中止させようとする場合が多いためである。
さらに自然主義的観点からプロトピックの使用も是としないことが多い(脱プロトピック)。当然これらの主張に医学的な根拠は無い。このような業者に脱ステロイド療法(およびそのビジネス独自の療法)を指示されて極端に悪化し、かゆみが強く夜も眠れないなど生活に支障をきたしたり、ひどい場合緊急入院という結果となる症例が多数発生し続けている。
少数ながら合併症による死亡例もある。また、アトピービジネスやマスコミによるステロイド剤の恐怖などの誇張した宣伝の結果、治療が難航している患者が自己判断で「脱ステロイド」を行い、症状が急激に悪化するという悲劇的な2次的被害もみられる。一時期、社会問題になったこともあった。

以上のように科学的根拠のないステロイド害悪論に基づいた「脱ステロイド」は危険であり、実施するに当たっては実際の病態がステロイドの副作用によってもたらされているのかを多数の医師とよく相談して判断した方が良い。その際、プロトピック軟膏やPUVA療法、シクロスポリンといった他の治療に切り替えながら様子をみることが多いので、それに関しても医師と十分に相談すべきである。

×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。