アトピー性皮膚炎に関わる抗体IgEを上昇させる遺伝上の問題:IL21R

アトピー性皮膚炎に関わる抗体IgEを上昇させる遺伝上の問題について
今回はIL21Rについてです。

アトピー性皮膚炎の診断基準の一つでもある血清IgEの上昇ですが、
ここと絡む遺伝子の一つとしてIL21Rも報告されました。
この変異ではIL21Rのある機能が落ちることでIgEが高くなるというのです。

どういうことでしょうか?

IL21R遺伝子はインターロイキン21の受容体で、
リガンドであるIL21をく都合させる能力はあるものの、
これ自体は細胞内への信号伝達能力は持っていません。

ボタンを押せるけどそれだけでは電気はつかない、ということですね。

実際の信号伝達にはこれと一緒にくっつく
IL2Rγという受容体が必要です。
ここからJAK1、JAK3、STAT1、STAT3といった
細胞内信号伝達分子を介して信号が伝わります。

IL-21のこの信号伝達経路はIgEの産生を誘導することが分かっています。ただしそれはCD40という分子を刺激して、かつ、IL-4が存在した場合に限ります。
CD40への刺激が入らない場合、IL-21Rからの刺激は、逆にIFNγという、アレルギーとは反対側に免疫系を持っていく物質を産生して、IL-4の機能を抑え、IgE産生をストップします。

この、IFNγを産生する機能が落ちているIL21Rを持つ人が、
IgEの高いアトピー性疾患になりやすいというわけです。

ブレーキをかけるべき時(CD40への刺激が入らないとき)に、
ブレーキになるIFNγの産生能力が低い遺伝子変異。

これによってIgEが過剰産生されてしまうわけですね。


非常にややこしい話で分かりにくかったかもしれませんが、
免疫系を支える分子には様々なものがあり、
それぞれが様々な機能をもち、
それが様々な分子の働きと密接に絡み合っている。

だから、それらの機能のある部分が損ねられると
ハーモニーが崩れ、アレルギーなどが起こってくる。

しかしその解析はとても簡単には行えない。
その辺のことがわかっていただければ嬉しいです。

関連文献を上げておきます。
この分子の研究には日本人の貢献が非常に高いのです。

1. Asao, H.; Okuyama, C.; Kumaki, S.; Ishii, N.; Tsuchiya, S.; Foster, D.; Sugamura, K. :
Cutting edge: the common gamma-chain is an indispensable subunit of the IL-21 receptor complex. J. Immun. 167: 1-5, 2001.
PubMed ID : 11418623

2. Hecker, M.; Bohnert, A.; Konig, I. R.; Bein, G.; Hackstein, H. :
Novel genetic variation of human interleukin-21 receptor is associated with elevated IgE levels in females. Genes Immun. 4: 228-233, 2003.
PubMed ID : 12700598

3. Kasaian, M. T.; Whitters, M. J.; Carter, L. L.; Lowe, L. D.; Jussif, J. M.; Deng, B.; Johnson, K. A.; Witek, J. S.; Senices, M.; Konz, R. F.; Wurster, A. L.; Donaldson, D. D.; Collins, M.; Young, D. A.; Grusby, M. J. :
IL-21 limits NK cell responses and promotes antigen-specific T cell activation: a mediator of the transition from innate to adaptive immunity. Immunity 16: 559-569, 2002.
PubMed ID : 11970879

4. Ozaki, K.; Kikly, K.; Michalovich, D.; Young, P. R.; Leonard, W. J. :
Cloning of a type I cytokine receptor most related to the IL-2 receptor beta chain. Proc. Nat. Acad. Sci. 97: 11439-11444, 2000.
PubMed ID : 11016959

5. Ozaki, K.; Spolski, R.; Feng, C. G.; Qi, C.-F.; Cheng, J.; Sher, A.; Morse, H. C., III; Liu, C.; Schwartzberg, P. L.; Leonard, W. J. :
A critical role for IL-21 in regulating immunoglobulin production. Science 298: 1630-1634, 2002.
PubMed ID : 12446913

6. Parrish-Novak, J.; Dillon, S. R.; Nelson, A.; Hammond, A.; Sprecher, C.; Gross, J. A.; Johnston, J.; Madden, K.; Xu, W.; West, J.; Schrader, S.; Burkhead, S.; and 26 others :
Interleukin 21 and its receptor are involved in NK cell expansion and regulation of lymphocyte function. Nature 408: 57-63, 2000.
PubMed ID : 11081504

7. Pene, J.; Guglielmi, L.; Gauchat, J.-F.; Harrer, N.; Woisetschlager, M.; Boulay, V.; Fabre, J.-M.; Demoly, P.; Yssel, H. :
IFN-gamma-mediated inhibition of human IgE synthesis by IL-21 is associated with a polymorphism in the IL-21R gene. J. Immun. 177: 5006-5013, 2006.
PubMed ID : 17015683

8. Pesce, J.; Kaviratne, M.; Ramalingam, T. R.; Thompson, R. W.; Urban, J. F., Jr.; Cheever, A. W.; Young, D. A.; Collins, M.; Grusby, M. J.; Wynn, T. A. :
The IL-21 receptor augments Th2 effector function and alternative macrophage activation. J. Clin. Invest. 116: 2044-2055, 2006.
PubMed ID : 16778988

9. Ueda, C.; Akasaka, T.; Kurata, M.; Maesako, Y.; Nishikori, M.; Ichinohasama, R.; Imada, K.; Uchiyama, T.; Ohno, H. :
The gene for interleukin-21 receptor is the partner of BCL6 in t(13;16)(q27;p11), which is recurrently observed in diffuse large B-cell lymphoma. Oncogene 21: 368-376, 2002.
PubMed ID : 11821949
posted by atopymouse at 16:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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脱ステロイド療法


「脱ステロイド」の本来の意味とは、アトピー性皮膚炎の症状が改善傾向にないのに現在治療に使用中のステロイド外用剤を中止して、ステロイド外用剤を使用せずにアトピー性皮膚炎の症状をコントロールする方法のことである(そのため、症状が改善してきたためステロイド外用剤を中止して経過をみるという行為は、「脱ステロイド」と称するのは不適切であろう)。
ステロイド外用剤は非常に高い有効性を持つ薬剤であるが、特に重症例では正しく医師の指導の下に使用していても十分に症状を抑えられない例や、長期の連用により皮膚萎縮、接触性皮膚炎、二次感染といった副作用をきたす例が存在する[18](ステロイド皮膚症の項参照)。 このような症例において副作用から脱却したり、ほかの治療法を模索するといった過程で脱ステロイド療法が行われることがあり、実際にそのようなケースに限ってはステロイド剤の中止が有効であったという報告もある。
しかし当然ながら、このような治療法に踏み切るためには、現在のステロイド外用剤による治療が効果をもたらしていないのかを慎重に判断する必要がある。

一方で「脱ステロイド」という言葉がアトピービジネスにおいて多々使用されることがある。その理由であるが、アトピービジネスは、他の科学根拠のない代替療法を勧めるため、「ステロイド外用剤はアトピー性皮膚炎を悪化させる」「ステロイド外用剤のリバウンドが続いている」「ステロイドを使用した年月に比例して治療に時間がかかる」「病変部から<毒>が排出されているので湿疹は好転反応である」などの独自理論を説明し、ステロイド剤に対して恐怖を煽り、ステロイド剤を中止させようとする場合が多いためである。
さらに自然主義的観点からプロトピックの使用も是としないことが多い(脱プロトピック)。当然これらの主張に医学的な根拠は無い。このような業者に脱ステロイド療法(およびそのビジネス独自の療法)を指示されて極端に悪化し、かゆみが強く夜も眠れないなど生活に支障をきたしたり、ひどい場合緊急入院という結果となる症例が多数発生し続けている。
少数ながら合併症による死亡例もある。また、アトピービジネスやマスコミによるステロイド剤の恐怖などの誇張した宣伝の結果、治療が難航している患者が自己判断で「脱ステロイド」を行い、症状が急激に悪化するという悲劇的な2次的被害もみられる。一時期、社会問題になったこともあった。

以上のように科学的根拠のないステロイド害悪論に基づいた「脱ステロイド」は危険であり、実施するに当たっては実際の病態がステロイドの副作用によってもたらされているのかを多数の医師とよく相談して判断した方が良い。その際、プロトピック軟膏やPUVA療法、シクロスポリンといった他の治療に切り替えながら様子をみることが多いので、それに関しても医師と十分に相談すべきである。

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