スキンバリアがアトピー性皮膚炎の症状の強弱に関連する

スキンバリアがアトピー性皮膚炎の発症に関連することに関して

スキンバリアの破たんがアトピー性皮膚炎を誘発することは昔から指摘されていた。中でもフィラグリン(Filaggrin)の発現不全がアトピー性皮膚炎の発症しやすさと関連するということは1980年代から指摘されていたが、実際にその遺伝子変異とアトピー性皮膚炎との関連性が遺伝子解読によって確認されたのは2006年3月のことである。

似たような遺伝子配列の繰り返しを持つ巨大な分子であるFilaggrinは遺伝子配列を読み取ることが難しかったためにそれだけ遅くなってしまった。

一方で、Filaggrinなどの分子はさておいて皮膚バリア機能の個人差について、いくつかの数値の計測による比較での相対あるいは絶対数値化が試みられていた。なかでも経皮水分蒸散量(Trans-Epidermal Water Loss; TEWL)は比較的計測しやすいことと、コントロールが取りやすいことから、性別、年齢、人種差、基礎疾患、生活状態などの様々な条件を超えて、皮膚バリア機能の評価の方法として用いられているものである。

皮膚に直接押し当てて水分量を計測するだけのものであるから、痛くもないし面倒くさくもない。ただ、精密な計測装置はパソコンとセットで100万円を超えてしまうところがネックである。家庭に常備できる代物ではない。簡易TEWL計測装置なら10万円もしなかったと思うが。

TEWLを測るこの計測装置とても実は万能ではなくて、計測する場所や気温、湿度などによって大きくその答えが変動してしまうのだが、現在客観的に計測できる皮膚バリア機能比較評価数値として世界中で用いられている。最近ではお笑い番組の小ネタでも用いられているのを見て(芸人の頬のTEWLを比較して年齢を揶揄するもの)、ちょっと驚いたことがある。それほどポピュラーになりつつある。


最近の論文で、アメリカの子供たちでアトピー性皮膚炎のあるなしで、病気ではない場所でのTEWLの比較をして、これがアトピー性皮膚炎の発症や重症度、あるいはほかのアレルギー性疾患に関連性があるのかどうかについて大規模な比較検討試験がなされた。以下にその論文の要約部分を掲載する。


JAllergy Clin Immunol. 2008年の2月2日、オンライン版要約
アトピーの子供の本質的に欠陥がある皮膚バリア機能は病気の厳しさと互いに関連します。

Division of Epidemiology and Biostatistics, Department of Environmental Health, University of Cincinnati College of Medicine, Cincinnati, Ohio; Institute of Personalized and Predictive Medicine, Cincinnati Children's Hospital Medical Center, and the Department of Pediatrics, University of Cincinnati College of Medicine, Cincinnati, Ohio.

バックグラウンド: 皮膚バリア機能における基本的な欠陥がアトピー(AD)の病気の発生に寄与するということが最近の遺伝子研究により証拠があげられています。 表皮水分蒸散量(TEWL)を測定することによって、皮膚バリア機能の保全を客観的に評価することができます。 皮膚バリア機能の生体標識としてのTEWLの調査はサンプルとした人口が少ないものしかありませんでした、そして、アフリカ系アメリカ人の対象を含む研究が欠けていました。

目的: 私たちは、ADをもっている子供について調査する目的でそれでADなしあるいはADを持つアフリカ系アメリカ人の、そして、白人の子供の皮膚バリア機能の基準としてTEWLを比較することによって生まれつき変異のある皮膚バリアの機能評価をしてこれがADに関係するかどうかを決定しようとしました。

方法: TEWLは(1) 子供で4つのサイトのAD病変を伴わない通常の露出部の皮膚 (手のひらの前腕、背部の腕、下側の脚、およびほお)の上でAD(症例)、喘息かアレルギー性鼻炎にもかかわらず、AD(アレルギー体質の子供のコントロール)のない(2)子供、および(3)アレルギー病歴の一切ない子どもで測定されました。 ADの厳しさは、客観的なSCORADインデックスを使用することによって、評価されました。

結果: 両方の制御集団で見られるそれとテストされた解剖のサイト(P<.05)の大部分で比べて、TEWLはADの子供で増加しました。また、TEWLが客観的なSCORADスコアアレルギーの増感の存在と互いに関連したか、または他のアレルギーの状態はADの子供のTEWLに影響しませんでした。TEWLはアフリカ系アメリカ人の子供より白人で高かったです

CONCLUSION; TEWLによって評価される皮膚バリア機能は、ADの子供で本質的に病気の発症に影響しますが、他のアレルギーの状態をもっている子供で影響するというわけではありません。皮膚バリア機能不全の大きさはADの病気の厳しさと互いに関連します;



ということで、TEWLを計測することでわかるのはとりあえずはアトピー性皮膚炎が重症化しやすいかどうかということになる。

何だそんなこと、と思うかもしれないけれどもこれはこれで大事で、なぜならばこの数値の差を比較することでステロイドの投与量を加減したり、離脱するときのスケジュールを個人個人で変えることができるからである。

医療側だって悪人だの金儲けだの言われてまでステロイド薬は使いたくない。それでも激しい炎症が起こっている患者にはこれを使ってともかく炎症を抑え込み、そこからゆっくりとステロイド以外の方法での症状改善に持ち込みたい。それが患者にとって最善の治療法だと思えるからだ。

この時にステロイドからの離脱であるが、簡単に予定通りに進む子供と、なかなか離脱できない子どもと個人差は極めて大きい。これまでは薬の量を加減しながら手探りで行うしかなかったけれども、もしもTEWL測定のような簡単な痛くない検査で子供の体質がある程度読めれば、重症化しやすい子どものステロイド離脱は慎重にゆっくりと、そうでない子どもはもっとさくさくと進めても問題ない、そういう選別した治療方法が選べるはずである。


ということで、地味だけれども個の医療に向けて価値のある研究だと思われる。

で、治療の上でスキンバリアの保護を考えればどのような方法があるか考えてみよう。

皮膚表面を構成するのは表皮が作るたんぱく質、そこに蓄えられるセラミドとw水分、そして皮脂腺が作り出す脂分である。

これらは互いに補完し合ってバリアを構成し、それぞれが特異な機能を発揮することで総合的に様々な分子の侵入を防ぐ。


それを考えると、保湿だけでも、皮脂だけでも、たんぱく成分の補充だけでも不十分であり、これらを総合的に補充してやること、あるいはその患者の持ち皮膚の欠陥が明白であればその分子を補完することが理想である。

その意味では、最終的には遺伝子診断による補充療法の選択がなされるべきで、その理想に到達するにはあと10年ほどは必要ではないかと思われる。


では現時点では?

いろいろ試して一番具合のよいものを選ぶしかない。、

ワセリンが良いか、尿素が良いか、セラミドがいいか、いろんな成分の入ったクリームがいいか。

現時点では試していくしかないだろう。

その中から自分に合うものをできるだけ早く見つけ出すことが理想である。


posted by atopymouse at 16:02 | Comment(0) | TrackBack(1) | 日記
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Tracked: 2008-02-11 04:18
脱ステロイド療法


「脱ステロイド」の本来の意味とは、アトピー性皮膚炎の症状が改善傾向にないのに現在治療に使用中のステロイド外用剤を中止して、ステロイド外用剤を使用せずにアトピー性皮膚炎の症状をコントロールする方法のことである(そのため、症状が改善してきたためステロイド外用剤を中止して経過をみるという行為は、「脱ステロイド」と称するのは不適切であろう)。
ステロイド外用剤は非常に高い有効性を持つ薬剤であるが、特に重症例では正しく医師の指導の下に使用していても十分に症状を抑えられない例や、長期の連用により皮膚萎縮、接触性皮膚炎、二次感染といった副作用をきたす例が存在する[18](ステロイド皮膚症の項参照)。 このような症例において副作用から脱却したり、ほかの治療法を模索するといった過程で脱ステロイド療法が行われることがあり、実際にそのようなケースに限ってはステロイド剤の中止が有効であったという報告もある。
しかし当然ながら、このような治療法に踏み切るためには、現在のステロイド外用剤による治療が効果をもたらしていないのかを慎重に判断する必要がある。

一方で「脱ステロイド」という言葉がアトピービジネスにおいて多々使用されることがある。その理由であるが、アトピービジネスは、他の科学根拠のない代替療法を勧めるため、「ステロイド外用剤はアトピー性皮膚炎を悪化させる」「ステロイド外用剤のリバウンドが続いている」「ステロイドを使用した年月に比例して治療に時間がかかる」「病変部から<毒>が排出されているので湿疹は好転反応である」などの独自理論を説明し、ステロイド剤に対して恐怖を煽り、ステロイド剤を中止させようとする場合が多いためである。
さらに自然主義的観点からプロトピックの使用も是としないことが多い(脱プロトピック)。当然これらの主張に医学的な根拠は無い。このような業者に脱ステロイド療法(およびそのビジネス独自の療法)を指示されて極端に悪化し、かゆみが強く夜も眠れないなど生活に支障をきたしたり、ひどい場合緊急入院という結果となる症例が多数発生し続けている。
少数ながら合併症による死亡例もある。また、アトピービジネスやマスコミによるステロイド剤の恐怖などの誇張した宣伝の結果、治療が難航している患者が自己判断で「脱ステロイド」を行い、症状が急激に悪化するという悲劇的な2次的被害もみられる。一時期、社会問題になったこともあった。

以上のように科学的根拠のないステロイド害悪論に基づいた「脱ステロイド」は危険であり、実施するに当たっては実際の病態がステロイドの副作用によってもたらされているのかを多数の医師とよく相談して判断した方が良い。その際、プロトピック軟膏やPUVA療法、シクロスポリンといった他の治療に切り替えながら様子をみることが多いので、それに関しても医師と十分に相談すべきである。

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