カビとアトピー性皮膚炎

カビ(イースト)がアトピー性皮膚炎の症状悪化に関係するかもしれない。

アトピー性皮膚炎の患者さんでは、皮膚バリアが壊れていたり、かきむしったりで、皮膚表面が細菌が住みつきやすい状態になっていることはよく知られています。
中でも黄色ブドウ球菌はアトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚にたくさん生息していて、悪さをしているというのでも有名です。

ここでは細菌感染だけではなくて、カビの感染、あるいは常在もアトピー性皮膚炎の症状になんだか悪影響を及ぼしているらしいということの研究について載せてみます。





Chem Immunol Allergy. 2006;91:98-109.

アトピー性湿疹(皮膚炎)におけるMalassezia sympodialis感作の役割。
Schmid-Grendelmeier P、Scheynius A、Crameri R。

スイスアレルギーユニット、皮膚科学、大学病院、チューリッヒ

アトピー性湿疹(AE)は子供の10-20%と大人達の1-3%に発症する世界中でよくみられる、皮膚の慢性あるいは再発しやすい非常に痒い炎症です。

Malassezia sympodialisは大部分のAE患者と健常人の両方の皮膚に常在するイーストであると報告されました。 AE患者のおよそ50%は、即時型の皮膚反応をこのイーストに対して示すか、またはM.sympodialisに特異的な血清IgEを持ちます。 イーストへの感作(アレルギー反応を示すこと)はAE患者に専ら起こります。

この特定の感作の主因はアレルゲン侵入を容易にする患者で傷んでいる皮膚バリア機能であるかもしれません。 今までのところ、Malassezia特異的な抗原として13のアレルゲンが同定され、生産されて、分析されて、生体外(in vitro)でも生体内(in vivo)でも一部研究されてます。

分子進化的観点からみると、一部のアレルゲンはマンガンスーパーオキシド・ジスムターゼなどの構造を保存していますので、類似している分子と交叉反応するかのうせいがあり、その結果、構造的に関係づけられた人間のタンパク質に対して反応している可能性があります。これはアレルゲンとしてAE患者の一部である役割を果たして、扇動的に皮膚炎症反応の永続化に貢献するかもしれません。

組換え型のMalasseziaアレルゲンの実験研究での利用は、AEの感作発生、IgEと調停されたT細胞の免疫応答を治める基本的な免疫的機序のおパスウェイを解明するために貢献して、AEのMalassezia関連の症状を軽減するために新しい治療法のオプションを提供するかもしれません。



もともとカビは様々なアレルギー性疾患の原因となるアレルゲンになりうることはよく知られています。例えばそのもっとも有名なものは過敏性肺炎です。

過敏性肺炎とはさまざまな種類の粉塵が原因となって、肺でそれに対するアレルギー反応によってアレルギー性炎症がおこったものを指します。
この場合のアレルゲンで多いのは微生物やタンパク質などの有機物の粉塵が多くなります。当然ながら細菌とカビはその最たるものです。(もちろんそのほかに化学物質によっても過敏性肺炎が発症しますけど)。
古いビルなどの汚れた加湿器や空調装置(特にオフィスビルなどの大型装置)で抗原が循環することによって起こる空調肺と呼ばれる過敏性肺炎があります。
また、おもしろいことに部屋の家具や窓の配置によって家具の下や裏側にカビが発生しやすい、発生しにくいの差があり、
「風水占いに従って家具の配置換えをしたらしつこい咳がよくなった、さすが風水は効き目がある。」
なんてケースは、実はカビが発生しなくなって過敏性肺炎がよくなったのが実際という場合があります。

しかしカビを吸い込んだ人が必ず過敏性肺炎になるかというとそうではありません。
メカニズムについてはいくつか言われていますが、大量のアレルゲンに継続的にさらされ続けることが原因の一つと言えるようです。それで肺の免疫反応が過剰に起こり、炎症が続く不可逆的な変化により更にアレルゲンが入り込み、荒れるギア反応の完成に至るというわけです。
で、これが少量のアレルゲンに暴露されても起こるであろう人は、もともと肺の免疫反応が非常に亢進している人、あるいは肺の気道粘膜からアレルゲンが入りやすい遺伝的素因を持っている人などであると考えられていました。


今回の論文でカビがアトピー性皮膚炎の症状を増悪する理由として、皮膚のバリア機能が弱まっているのでカビアレルゲンが入りやすいからだというところ、これは過敏性肺炎の考え方と合致していますね。

今回の論文でさらに面白いことは、カビのアレルゲンの分子構造がヒトの生体の中のいくつかのたんぱく質の分子構造と似ているということです。この場合、交差と言いますが、カビに対して出来上がったアレルギー反応が自分の体の組織に対して反応し続けるという可能性があります。
一種の自己免疫病になってしまう可能性ですね。これは過敏性肺炎でもいくつか言われていることのようですが、これらのことがアレルギー性疾患の症状進行を複雑化して、治療をめんどくさくしているのです。

幸い、この論文で13のカビのアレルゲンが同定されました。これらが実際に免疫細胞にどんなことを引き起こすのか、さらに交差性によってどんな分子に対して自己免疫反応を生み出すのか、その場合どんなことが起こるのか。
動物や細胞を使ってそれを研究すれば、そのメカニズムがわかるでしょう。わかってくればそこを阻害したり抑制したりする方法を開発すればいいのです。それが治療法につながります。

今回の論文の意義はそういうものでした。
posted by atopymouse at 18:32 | Comment(1) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
お邪魔いたします。アトピー性皮膚炎の症状を緩和させる対策!です。
Posted by アトピー性皮膚炎の対策 at 2008年03月08日 14:46
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脱ステロイド療法


「脱ステロイド」の本来の意味とは、アトピー性皮膚炎の症状が改善傾向にないのに現在治療に使用中のステロイド外用剤を中止して、ステロイド外用剤を使用せずにアトピー性皮膚炎の症状をコントロールする方法のことである(そのため、症状が改善してきたためステロイド外用剤を中止して経過をみるという行為は、「脱ステロイド」と称するのは不適切であろう)。
ステロイド外用剤は非常に高い有効性を持つ薬剤であるが、特に重症例では正しく医師の指導の下に使用していても十分に症状を抑えられない例や、長期の連用により皮膚萎縮、接触性皮膚炎、二次感染といった副作用をきたす例が存在する[18](ステロイド皮膚症の項参照)。 このような症例において副作用から脱却したり、ほかの治療法を模索するといった過程で脱ステロイド療法が行われることがあり、実際にそのようなケースに限ってはステロイド剤の中止が有効であったという報告もある。
しかし当然ながら、このような治療法に踏み切るためには、現在のステロイド外用剤による治療が効果をもたらしていないのかを慎重に判断する必要がある。

一方で「脱ステロイド」という言葉がアトピービジネスにおいて多々使用されることがある。その理由であるが、アトピービジネスは、他の科学根拠のない代替療法を勧めるため、「ステロイド外用剤はアトピー性皮膚炎を悪化させる」「ステロイド外用剤のリバウンドが続いている」「ステロイドを使用した年月に比例して治療に時間がかかる」「病変部から<毒>が排出されているので湿疹は好転反応である」などの独自理論を説明し、ステロイド剤に対して恐怖を煽り、ステロイド剤を中止させようとする場合が多いためである。
さらに自然主義的観点からプロトピックの使用も是としないことが多い(脱プロトピック)。当然これらの主張に医学的な根拠は無い。このような業者に脱ステロイド療法(およびそのビジネス独自の療法)を指示されて極端に悪化し、かゆみが強く夜も眠れないなど生活に支障をきたしたり、ひどい場合緊急入院という結果となる症例が多数発生し続けている。
少数ながら合併症による死亡例もある。また、アトピービジネスやマスコミによるステロイド剤の恐怖などの誇張した宣伝の結果、治療が難航している患者が自己判断で「脱ステロイド」を行い、症状が急激に悪化するという悲劇的な2次的被害もみられる。一時期、社会問題になったこともあった。

以上のように科学的根拠のないステロイド害悪論に基づいた「脱ステロイド」は危険であり、実施するに当たっては実際の病態がステロイドの副作用によってもたらされているのかを多数の医師とよく相談して判断した方が良い。その際、プロトピック軟膏やPUVA療法、シクロスポリンといった他の治療に切り替えながら様子をみることが多いので、それに関しても医師と十分に相談すべきである。

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