アトピー性皮膚炎には疾患の原因遺伝子が存在するのか?

アトピー性皮膚炎には疾患の原因遺伝子が存在するのか?

この問題に関しては何年も議論が繰り返されている。
そもそもアトピー性皮膚炎という定義自体が非常に幅広い疾患を対象にしうるものであるだけに、
遺伝が関連しているとも関連していないとも言える。

そもそも現代の先進国では15%ぐらいのこどもに何らかのアトピー性皮膚炎様の症状を認めるので、
しかもそれは衛生状態の良くない発展途上国では認められない疾患なので、
アトピー性皮膚炎の発症には先進国の綺麗過ぎる衛生状態、大気汚染、食生活などの環境因子による影響が大きいとされてきている。

ただしこれはまた一方ではそれだけでは決まらないことも示唆している。
なぜならば環境による要因が主であるならば、15%しか発症しないことの逆に説明がつかない。
同一家族内で発症率が異なることもそれを大きく支持する現象である。

つまり何が言いたいかというと、環境要因だけではなくて体質が発症に大きく影響しているということ、
体質を決める要因の大きな部分をその人の遺伝子配列が占めるのは明らかであるから、
アトピー性皮膚炎になりやすい遺伝子変異というものはあってしかるべきである。


これまでに、具体的なものはいくつか見つかっている。

たとえばTh2反応という、アレルギーに体質が傾く際に免疫調節の主体をなす反応系の
中心的役割を果たす分泌因子IL-4というものがあるが、この遺伝子や、その受容体、
さらにはその下流での信号伝達に関わるStat6という細胞内信号伝達因子での変異が、
アトピー性皮膚炎を含むアレルギー性疾患の家系で発見され、報告されている。

さらに、大規模な研究で報告されたものとしては染色体3q21と部位に
アトピー性皮膚炎にかかりやすい原因遺伝子変異が存在することが報告されている。

Nature Genetics 26, 470 - 473 (2000)
A major susceptibility locus for atopic dermatitis maps to chromosome 3q21

Young-Ae Lee1, 2, Ulrich Wahn2, Rainer Kehrt2, Luigi Tarani3, Luisa Businco3,
Dan Gustafsson4, Florence Andersson4, Arnold P. Oranje5, Albert Wolkertstorfer5,
Andrea v. Berg6, Ute Hoffmann7, Wolfgang Küster8, Thomas Wienker9,
Franz Rüschendorf1, 9 & André Reis1, 10, 11

Gene Mapping Centre, Max-Delbrück-Centre (MDC) for Molecular Medicine, Berlin, Germany.
Department of Paediatric Pneumology and Immunology, Humboldt-University, Berlin, Germany.
Department of Paediatrics, University La Sapienza, Rome, Italy.
Department of Paediatrics, Örebro Medical Center Hospital, Örebro, Sweden.
Department of Dermatology and Venereology, University Hospital, Rotterdam, The Netherlands.
Department of Paediatrics, Marienhospital, Wesel, Germany.
Kinderklinik Schwabing, Technical University, Munich, Germany.
TOMESA-Fachklinik, Bad Salzschlirf, Germany.
Institute of Medical Biometry, Informatics and Epidemiology, University of Bonn, Germany.
Department of Human Genetics, Humboldt-University, Berlin, Germany.

この文献の関係者の数と所属研究所の多さをみていただければこれがどれほど大規模になされたもので、
どれほどたいへんであったかというのは推測できるのだが、(実際は1999家系の全ゲノムを比較している)
これにしても原因遺伝子を確実に同定できているわけではなかった。




思わぬブレイクはしかし、2006年の春に報告された。
これについては記事を代えて報告しよう。

posted by atopymouse at 19:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

アトピー性皮膚炎小児の肥満傾向と成長遅延

アトピー性皮膚炎と肥満が関係するというデータである。
身近なアトピー性皮膚炎の子供、大人を見る限り、そのような肥満傾向に気がついた記憶はない。しかしこの文献では小児期における肥満傾向が指摘されている。

British Journal of Dermatology
Volume 155 Page 532 - September 2006, Volume 155 Issue 3
CUTANEOUS BIOLOGY
Pattern of growth and adiposity from infancy to adulthood in atopic dermatitis
J.A. Ellison, L. Patel*, T. Kecojevic†, P.J. Foster†, T.J. David* and P.E. Clayton*

症例数が110例ということで少ないとは思うのだが、結果はこうだ。

1990年のイギリスでの平均身長、体重およびBMIの測定値と統計学的に比較した。まず、対象の110人だが、アトピー性皮膚炎はすべての患者における主要疾患であったが、92人では喘息の既往歴も有った。
身長、体重、BMIの標準偏差解析の傾向性はAD患者ではすべてコントロールとは異なっていた。5歳時点でBMIが患者は基準集団よりも0.44 kg/m2高かったが、身長と体重は基準集団よりも低かった。
患者は対照群よりも身長最大発育速度が遅かったが、青年期後期になってくると追いついてきた。

アトピー性皮膚炎に限らず、何かの疾患を持っていると栄養が充分取れなかったり、睡眠や運動の不足で発育が遅くなることが考えられる。小児型のアトピー性皮膚炎は思春期を境に改善するものが多く、単にそのことが結果となっているだけかもしれない。

そもそも、肥満と皮膚炎、あるいはアレルギーとの関連は有るのだろうか?
肥満症adiposityとアレルギーallergyでキーワード検索(Google)してみたところ、以下の文献にすぐ行き当たった。

Clinical & Experimental Allergy
Volume 29 Page 323 - March 1999, Volume 29 Issue 3
Association between body mass index and allergy in teenage girls in Taiwan
Huang, Shiao & Chou

ここでは台湾の喘息患者について年齢、性別などを検討したところ、10代の女性で肥満傾向があるもので統計学的に有意に喘息発症率が高いというものであった。

ここで根拠となる文献はさらにさかのぼる必要があるが、実は喘息と肥満症の間には明らかな相関関係があるというものである。
しかしこちらはアレルギーと関係があるというものではない。肥満による気道の抵抗増加が喘息発症に関連するという概念である。肥ると呼吸がしづらいから、喘息素因がある人でも発症しやすい原因のひとつになるということだ。


今回、どうしてアトピー性皮膚炎と肥満の関係が追跡されたのか?
ひとつの考え方は、生活環境の変化がアトピー性皮膚炎を生んだというものだ。特に調査は日本同様の東洋国家、台湾であり、ここでも日本同様、食生活の西洋化に伴って肥満児童が増えている、アレルギー疾患も増えている、二つの間に関連はあるのかということであった。

結論としてはアトピー性皮膚炎との関連はなく、あくまでも喘息の悪貨因子として肥満がありうるというものであった。


二つの文献からの結論は、アトピー性皮膚炎が小児の発育不全と肥満傾向を生み出すかもしれないから気をつけましょう。だけど、肥満症がアトピー性皮膚炎のリスクファクターという感じではないよ。
そんなところか。



posted by atopymouse at 12:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
脱ステロイド療法


「脱ステロイド」の本来の意味とは、アトピー性皮膚炎の症状が改善傾向にないのに現在治療に使用中のステロイド外用剤を中止して、ステロイド外用剤を使用せずにアトピー性皮膚炎の症状をコントロールする方法のことである(そのため、症状が改善してきたためステロイド外用剤を中止して経過をみるという行為は、「脱ステロイド」と称するのは不適切であろう)。
ステロイド外用剤は非常に高い有効性を持つ薬剤であるが、特に重症例では正しく医師の指導の下に使用していても十分に症状を抑えられない例や、長期の連用により皮膚萎縮、接触性皮膚炎、二次感染といった副作用をきたす例が存在する[18](ステロイド皮膚症の項参照)。 このような症例において副作用から脱却したり、ほかの治療法を模索するといった過程で脱ステロイド療法が行われることがあり、実際にそのようなケースに限ってはステロイド剤の中止が有効であったという報告もある。
しかし当然ながら、このような治療法に踏み切るためには、現在のステロイド外用剤による治療が効果をもたらしていないのかを慎重に判断する必要がある。

一方で「脱ステロイド」という言葉がアトピービジネスにおいて多々使用されることがある。その理由であるが、アトピービジネスは、他の科学根拠のない代替療法を勧めるため、「ステロイド外用剤はアトピー性皮膚炎を悪化させる」「ステロイド外用剤のリバウンドが続いている」「ステロイドを使用した年月に比例して治療に時間がかかる」「病変部から<毒>が排出されているので湿疹は好転反応である」などの独自理論を説明し、ステロイド剤に対して恐怖を煽り、ステロイド剤を中止させようとする場合が多いためである。
さらに自然主義的観点からプロトピックの使用も是としないことが多い(脱プロトピック)。当然これらの主張に医学的な根拠は無い。このような業者に脱ステロイド療法(およびそのビジネス独自の療法)を指示されて極端に悪化し、かゆみが強く夜も眠れないなど生活に支障をきたしたり、ひどい場合緊急入院という結果となる症例が多数発生し続けている。
少数ながら合併症による死亡例もある。また、アトピービジネスやマスコミによるステロイド剤の恐怖などの誇張した宣伝の結果、治療が難航している患者が自己判断で「脱ステロイド」を行い、症状が急激に悪化するという悲劇的な2次的被害もみられる。一時期、社会問題になったこともあった。

以上のように科学的根拠のないステロイド害悪論に基づいた「脱ステロイド」は危険であり、実施するに当たっては実際の病態がステロイドの副作用によってもたらされているのかを多数の医師とよく相談して判断した方が良い。その際、プロトピック軟膏やPUVA療法、シクロスポリンといった他の治療に切り替えながら様子をみることが多いので、それに関しても医師と十分に相談すべきである。

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